あひるの旅日記
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水野政雄の世界:美濃・尾張の旅その三




雨の郡上八幡を歩いていたら、うだつのある古い町並みの一角に小さな美術館を見つけた。遊童館と書いた看板がかかっている。ちらっとのぞいてみると、紙人形やら可愛い子どもたちを描いたメルヘンタッチの絵などが、台上やら壁際に沢山見えた。筆者はすっかり嬉しくなってしまい、他のあひるたちを誘って中に入った。

外部から見えたのは作品の販売コーナーで、一階の奥のほうと、二階以上が美術館になっていた。一羽当たり300円の入場料を払って奥へ入ると、紙人形の展示コーナーがあった。中心には村祭りの様子を演出した膨大な数の紙人形があり、そのまわりには木の細工やら影絵が飾られていた。人形たちはみな生きているように思えるほど、表情が躍動していた。

二階には絵画が展示されていた。明るい背景の中に、子どもたちや動物たちが表情豊かに描かれている。動物たちはみな擬人化が施され、それぞれが何かしら意味のある動作をしていた。サンショウウオの絵が多い。郡上八幡にはサンショウウオが多いらしい。

三階にも紙人形が展示されていた。郡上八幡の大名行列の様子が再現されている。大勢の家来たちがそれぞれの格式に従って様々な装いと振る舞いをしている。馬に乗っているのは身分の高い侍、駕籠に乗っているのは殿様と家老たちだ。

三階から一階に降りる途中の階段の壁に、うだつのある風景を描いた絵がかけられていた。底に描かれているのは、先ほど見てきたばかりのうだつのある街並で、手前には赤い傘を持った女性が、通りの突き当りには小高い山を背景にして寺が描かれている。山の上には城が建っているが、これは実際の眺めではない。

その絵は、一つ一つは実際の眺めをつなぎ合わせて、全体としては、実際とは異なった風景を作り上げているのだ。

この画家の絵をみるのはこれが始めてだ。水野政雄という人で、この街の出身だという。あまり有名な画家ではないようだが、なかなかいい仕事をしているのが、この日見た作品から伝わってくる。これから先、価値が認められるのではないか。

とにかく一目見ただけで、すっかり気に入ってしまった。旅先でのこんな小さな発見が、この旅の最上の土産になったようだ。(写真は水野政雄の油彩画「てんとう虫」)







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