あひるの旅日記
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香嵐渓の紅葉を見る:木曽を歩くその三




バスは旅館を出発した後、木曽川の名所寝覚めの床に立ち寄った。ここも以前来たことがある。その折は道路沿いに間近に眺めたものだったが、今回ははるか上の方から、それも鉄道の線路を挟んで、眺め下す形になった。だから景色はあまりよくない。名前は同じでも、とても同じ場所とは思えない。

次に立ち寄った道の駅で、タカノツメのふさふさした塊を見つけた。色がいかにも鮮やかで、味もよさそうに見えたので、是非もなく買ってしまった。ついでにギンナンを一袋買った。静ちゃんあひるは、家で待っている子猫のために、マタタビの切れ端を一本買ってやった。まだ小さなうちからマタタビをかがされた猫は、どんな猫になるのかなと、チョッピリ気になるところだ。

香嵐渓には正午前についた。ガイドの事前の話では、普通の道を通ったら四キロ三時間はかかる、とあったので心配だったが、裏道を通ったおかげで渋滞に巻き込まれなかったということらしい。もっともそのおかげでバスが揺れて、揺れに弱い吾輩は大いに難儀したのだった。

ここは、三河足助に位置するとあって、名古屋の観光圏内だ。だから名古屋方面から来た人が多いのだろう。それにしてもすさまじいまでの人出だった。バスの停留所から香嵐渓の入り口まで、普段なら三分もあれば十分歩ける距離を、15分もかけて歩いた。それほど人出が多かったのだ。

赤い木橋を渡って向う側の河原へ下り、そこで弁当を広げた。河原には他にも大勢の人たちが思い思いに弁当を広げていた。我々の弁当は寝覚めの床の売店で仕入れたもので、なかなか凝った料理が並んでいる。缶ビールを飲みながらそいつをつまんでいると、暴走族のバカ者どもが、大音量を周囲にまき散らし始めた。一向に遠慮する気配がない。警察官も取り締まる気配が見えない。まあ、今の日本は、暴走族のような連中が国の政治を左右している世の中なので、こんなところで暴走族がのさばるのも不思議ではないのかもしれない。

食事の後、渓流沿いの道を紅葉を見ながら散策した。イロハモミジやカエデの類が赤く色づいているほか、イチョウも黄色く色づいている。まさに紅葉の真っ盛りだ。散策路の外れには三州足助屋敷というのがあって、昔の民家を展示してある。入場券を買って中に入ると、牛が出迎えてくれた。なかなか強烈な匂いを発しているが、安ちゃんあひるはその匂いがなつかしいらしく、しばらく牛のそばを離れなかった。

一番大きな家には、十九歳になるという老犬が我々観光客を出迎えてくれた。かなりな老犬で、立っているのがやっとといった具合に見える。こうやって皆さまをお迎えするのが彼の勤務だと案内書に書いてあったが、くたびれるとへたり込んでしまうので、その折には勤務終了にさせていただきますともあった。ともあれ、ごくろうさん。

バスは、二時半に香嵐渓の駐車場を出発した。事前の予定では、ここから東名高速道を通って、八時前には新宿に帰着することになっていたが、東名高速は大渋滞が予想されるので、往路通り中央道を通って帰ることになった。甲府を過ぎる辺りまでは順調だったが、例の小仏峠の大渋滞を避けて、大月でいったん一般道に下り、上野原で戻るという選択をした。馬鹿な土木屋どもが、馬鹿な道路を作ったおかげで、利用者はいまだに迷惑しているのである。

高速道路に戻った後も渋滞は暫くやまず、八王子を過ぎる頃からやっとスムーズな流れになった。こんなわけで、新宿にたどり着いたのは九時半ごろになってしまった。

といっても、そんなに愚痴を垂れるわけにもいくまい。なにしろ料金は格安なのだから。(写真は香嵐渓)







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