あひるの旅日記
HOMEブログ本館日本文化美術批評東京を描く水彩画動物写真プロフィール掲示板



竹田城跡:若狭・三丹の旅その四




三日目の朝食は昨夜と同じ部屋で各自に膳が用意されていた。このほうがバイキングよりもずっとよい。飯を食いながらみな天気の心配をする。昨夜来の雨がまだ残っていて、天気予報でも午前いっぱいは残るだろうという。今日は午前中にこの旅行最大の目玉である天空の城竹田城を訪ねる予定なので、晴天は期待しないまでも、せめて雨にやんでほしい。皆が口々にそういうと、しずちゃんあひるがなだめるように、心配しないでもいいのよ、と言った。わたしは晴れ女だから、きっと雨をやませてみせる、と言うのだ。

バスは円山川を遡上して竹田城跡へと向かった。途中に広がって見える田圃地帯はコウノトリの繁殖地として有名になったところだ。バスが竹田城跡に到着する頃雨がやんだ。しずちゃんあひるの言うとおりだ。もしも雨がやまなかったら晴れ女の看板を下ろさねばならなかったところだけれど、雨がやんでよかったね、さすがに晴れ女の神通力だよ、とミーさんあひるが言った。

竹田城跡へは、山の麓でマイクロバスに乗り換えて山頂近くまで行き、そこから山道を歩いて登った。現地のガイドが同行して、竹田城についていろいろと説明してくれた。このガイドが中々剽軽なおじさんで、冗談を飛ばしながら説明をする。その説明が非常にわかりやすい。それによれば、この城の最大のポイントは石垣にあるという。これは穴太(あのう)衆という石工の集団が作ったもので、野積という独特の工法を用いているという。野積というのは、大小の石を一見無造作に積み上げる工法で、石と石の間にできる遊びの部分が石垣の堅牢性をもたらすのだそうだ。

竹田城が一躍有名になったのは、NHKの大河ドラマ「天と地と」で謙信の山城の舞台となったことがきっかけだという。NHKではここに春日山城の天守閣を再現し、それを舞台として一年間の大河ドラマを展開したわけである。この城が「天空の城」と呼ばれるようになったのには、この大河ドラマが大いに影響しているらしい。

その後、高倉健の映画「あなたへ」で紹介されて人気に拍車がかかったということらしいが、この映画は小生も見たことがある。その映画の中で高倉健が立っていた場所はここですよ、とガイドが説明してくれた。なお、先日、市役所の土木屋が勝手に史跡の一部を破壊して世間の非難を浴びたことがあったが、ガイドはそのことには触れなかった。

城跡の上から周囲を見回すと頗る眺めがよい。麓の城下町の傍らには円山川が流れ、その先には朝来山がのんびりと裾を伸ばしている。その裾のところに小山が見えるが、これは茶すり山古墳という前方後円墳なのです、とガイドが説明してくれた。朝来山には竹田城跡がよく見えるポイントがあって、そこからとった写真は非常に美しいのだそうだ。

竹田城跡の写真のなかで最も美しいのは靄の中から浮かび上がったところを撮ったもので、これを取るには夏場の早朝でなければならないという。パンフレットにその写真が載っているが、なるほど幻想的な雰囲気が出ていて、中々美しい眺めだ。







HOMEあひるの旅次へ










作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013-2014
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである