あひるの旅日記
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あひるの北陸の旅その二:五箇山の合掌集落を歩く




翌日(四月十五日)六時前に起床し、朝風呂を浴びてテレビをつけると、熊本で大地震が起きたというニュースをやっていた。震度七の揺れを記録し、熊本城が崩れるなどしたほか、大勢の死傷者が出ているという。最初の揺れは昨夜九時過だというから、筆者は体調が悪くて床に潜り込んでいた時だ。しかし同室の二羽(オーさんあひるとあんちゃんあひる)も、揺れを感じるでもなくテレビも見なかったので、こんな地震が起きていたことは知らなかったという。ともあれ熊本城が崩れるくらいだから、よほどすさまじい地震だったに違いない。

朝食を済ませた後、バスは八時半に出発した。行先は越中の山間にある五箇山。飛騨の白川郷と並んで合掌集落で名高いところだ。何か所かの集落からなっているが、我々はそのうちの菅沼という集落を訪ねた。庄川の流れにそって狭い田圃地帯が広がり、その中に合掌造りの屋根を持つ古民家が点々と立っている。上の写真は小高い丘の上から集落を見下した眺めだ。田圃のなかに合掌造りの家が展開する眺めは、日本の原風景を見るようで、なんとも懐かしい気持ちになる。



時あたかも春爛漫の季節。桜の花が咲き広がり、花見気分をあわせて味わうことができた。桜には色々な種類があり、また桜以外に木蓮やあんずの花のようなものも咲いている。そうした花を傍らに見ながらの集落の眺めは、華やかさと渋さとが入り混じった何とも言えない味わいを感じさせる。

合掌造りと言うのは、切妻屋根の三角の頂点が手を合わせたような形になっていることから名づけられたそうだ。屋根の勾配が急で、その分屋根裏に広い空間ができている。外から見ると三階建のように見える。屋根は茅葺で、十数年ごとに葺きかえるという。囲炉裏の煙が茅をいぶすおかげで、防虫効果などが働き、茅の寿命は結構長いそうだ。



家々はそれぞれ土産屋とか食堂を兼ねている。土産屋では、手作りの工芸品などを売っていた。添乗員嬢の言うには、ここの集落の人々は、商売気もなくのんびりとしている。それに比べて白川郷は、商売気のある人々が多くて、客呼びのアイデアに熱心だという。そのためか、伝統的な景観が損なわれる傾向が指摘され、世界遺産の指定を見直すと警告されたこと再三だという。最近白川郷では、大規模ホテルの建設計画が持ち上がったが、それも地元の中から出て来た話だ。客寄せのためのアイデアらしいが、もしそれが実現したら、白川郷の景観は台無しになるに違いない。それでは元も子もなくなるだろうに、と小生は思った次第だ。



五箇山を辞した後、金沢に向かった。金沢は、北陸新幹線の開通でちょっとした観光ブームになっているそうだ。市内の観光名所には大勢の人々が押し寄せ、大変な賑わいを呈しているという。我々はまず、近江町市場と言うところに行った。名前の通り金沢の台所を支える巨大な市場である。近江から来た商人が開いたところから近江町市場と呼ばれるようになった。規模の大きさは京都の錦小路市場を上回る。日本海でとれた魚や近郊で栽培した野菜などが売られている。小生はこぶりのたけの子を一本とイカの塩辛を一杯土産に買った。


市場の中を一周した後、とある食堂に入って海鮮どんぶりを食った。お昼にはまだだいぶ間があったが、とてもうまそうに見えたので、あんちゃんあひると横ちゃんあひるが我慢できなくなったのだった。その期待に違わず、これがまた実にうまかった。舌がとろけるようだとは、この丼のためにある言葉と思うくらいにうまかった。おかげであひる一同大いに満腹した次第だった。







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